第112話 腰痛物語(2015年12月) 15KB

四十路手前に膝を痛めた。パキパキ、コキコキ鳴り出して、鈍痛走って膨らんで、次第に曲がらなくなった。病院へ行き、レントゲンを撮り、水を抜いてもらった。軟骨がすり減って炎症を起こしているらしい。この病院は消防団の先輩が勤めているから選んだ。整形...

第109話 消化試合の鬼(2015年7月) 4KB

ソフトテニスで中学生のコーチをしている。その日は中体連の県大会。空き時間があったので、何か面白いものはないかと、フラフラフラフラ歩いていると聞き捨てならぬ日本語が聞こえてきた。「頼んだぞ!消化試合の鬼!」少年たちは泣いていた。送り出す二人に...

第106話 客人去り難し(2015年3月) 15KB

知らぬ人から手紙が来た。「一度会って話がしたい」と言う。全国ネットのお笑い番組で私を発見したらしく、すぐさま筆を執ったそう。話したい内容については一切触れてなかった。兎にも角にも筆を執ったという事実、そして会いたいという念が綴られていた。す...

第104話 老若男女髪雑記(2015年1月) 9KB

幼少より我慢できない笑いがある。ハゲである。「ハゲデアル」と書いた時点で喉元まで熱い何かが込み上げてくる。活字の時点でイエローカード。声に出したらレッドカード。隠そうものなら即終了。ハゲは反則極まりない。私のハゲ初見は祖父であった。本田宗一...

第102話 ごめんよ青春!(2014年11月) 7KB

子供が好きだ。子供というより、煌いてる人間が好きで、そういう風に人生を終えたいと常々思っている。煌きは雑念なき本気に宿る。つまり生きものとしての本能や反射であり、そういう溌剌としたものを常に感じて生きていたい。が、娑婆を生きるという事は生き...

第93話 美術とは何ぞや?(2014年2月) 12KB

美術の人がやって来た。申し訳ないが最初猛烈に警戒した。阿蘇にはアーティストと呼ばれる人が多い。色んなアーティストと呑んだが、みんな言ってる事が意味不明で、やたら横文字を使いたがった。先日メーカーフェアというモノづくりの祭典に参加した時もアー...

第90話 回転寿司にて(2013年11月) 7KB ☆

凄い集団が来た。回転寿司に文明拒否の四人組である。昨今の回転寿司はタッチパネルで注文が普通だが「そういうモノは一切やらん」と老年四人組は言う。「ここに写真付きのメニューがあるじゃない!これで注文するわ!」四人組、頑として引かない。「そう言わ...

第89話 末っ子天王山(2013年10月) 13KB

思い込みで憧れている。「末っ子ってどんな気分で世の中を見ているのだろう?」末っ子が好きだ。好きだから嫁も末っ子、親友も末っ子、末っ子は気分がいい。彼らに共通するのはテキトー。感じで書く適当とは違い、カタカナで書くテキトー、つまり森羅万象を右...

第84話 Nの話(2013年3月) 8KB ☆

Nという地元の友がいる。むろん呑む。酒癖はいい。暴れもせず説教臭くもない。ただ呑み過ぎると魂が飛ぶ。十代半ばNと頻繁に呑み歩いた。Nは呑み過ぎて寝ると意味不明な言葉を発して飛び起きる。次いで壁に向かって喋り出す。(座敷わらしでも見えるのか?...

第83話 地域の子(2013年2月) 8KB

「ま!待てい!」小さい其奴に拳固の一発でも食らわせねば気がすまぬ。が、動けない。三度目であった。今回は隣村のスーパーで買い物中、不意に、そう、芯から無防備な状態でやられてしまった。その時、私の目線は惣菜にあった。頭の中も惣菜の物色一つで余念...