家族

家族

第153話 菜穂のサンキュー(2021年11月) 13KB

我家にはサンナナ旅行という儀式がある。娘が三歳七ヶ月の時に父と関西へ二人旅するというもので、これを境に幼児から児童になるらしい。「らしい」と書いたのには理由があって、三女と四女が12歳差。つまり干支一周、12年ぶりの儀式で、そんな儀式すっか...
家族

第145話 腰痛物語2(2019年7月) 10KB

二ヵ月半、生きる醍醐味を書かなかった。なぜか?腰が痛くて長時間パソコンする気分にならなかった。手帳によると令和元年になった瞬間(5月1日)から痛み始め、5月12日、もうどうにもならず前回(腰痛物語1)お世話になった気功師に頼った。が、今回は...
家族

第142話 隠せ!(2019年2月) 5KB

嫁が長女を産んだのは26歳、それから2年越しで3人の子を産み、41歳で4人目を産んだ。何が辛いって全てにおいて気力が萎え、全くやる気が湧かないそう。更に体も微妙らしく尿漏れが一番ヤバいと言う。夫である僕はそれを笑い飛ばした。「俺は老眼と膝と...
家族

第138話 嫁に使って終わり(2018年8月) 7KB

ご存知の通り私はカネがなくなると働く。先月マジでなくなった。働かねばならない。今年は何と言っても四女が生まれた。更に上の娘が三人揃って修学旅行。更に更に古い付き合いの先輩から「捻り板金の使い道を考えて」と頼まれ(第137話参照)やたらカネを...
家族

第136話 赤ちゃんのいる家(2018年3月) 10KB

2月9日「肉の日」に産まれた四女は2月14日「チョコの日」に我家へ来た。記念日はデブっぽいのに体は小さく、身長48センチ体重2キロちょいしかなかった。病院へ迎えに行きながら搬送手段を考えた。抱っこは危険だし、チャイルドシートは未熟児寸前だか...
家族

第135話 その日~四十路の嫁が出産した日~(2018年2月) 13KB

その日は突然こなかった。序章があった。 2月2日、予定日十日前。弟が牛肉を持ってやってきた。高い肉らしい。私も嫁も三姉妹も慌てた。先に食わなきゃ誰かに食われる、家族の掟にならい我先に慌てて食った。その夜、嫁は激しい腹痛に見舞われた。「これは...
家族

第131話 おじさんのまねごと(2017年8月) 15KB

何度も書いているが寅さん(男はつらいよ)に焦がれている。寅さんには甥っ子がいて、おじさんのまねごとをしたりしなかったりする。「僕もまねごとしたい」常々そう叫んでいたら夏休みに甥と姪が来た。二人は埼玉生まれの埼玉育ち、比較的都会っ子だから田舎...
家族

第130話 その日~四十路の嫁が妊娠した日~(2017年7月) 11KB ☆

ここ数日、嫁は常に気だるかった。何を言っても反応は鈍く、家事は手を抜き、来客の予定を伝えると露骨に嫌がった。「はぁストレス、はぁ春日部(実家)帰りたい」何度もその声が聞こえ、聞こえる度に私は憂鬱になった。 私は古い。女性の権利が云々と、集団...
家族

第129話 時間を守らぬ人を考察す(2017年5月)5KB

嫁がまったく時間を守らぬ。知り合って19年になるけれど守ったためしがない。「ちゃんと急いでるの!急いでるけどなぜか間に合わないの!」判で押した言い訳を聞きつつ、ふと守らぬ人の共通点に気付いた。「言い訳が一緒だ」身内じゃないから名前は出せぬが...
家族

第126話 八恵とふたりで(2017年2月) 18KB

三歳七ヶ月の娘と二人旅に出るサンナナ旅行を三人娘全員とやった。自慢じゃないが私は一度もオムツを替えた事がなく、この旅が父親への登竜門で、この旅を経て何となく父親になった気がする。それから娘たちは勝手に成長し、飯さえ食わせりゃそれなりに大きく...
家族

第116話 熊本地震とアソカラ(2016年4月) 24KB ☆

1:前震 最大経験震度レベル3だったのに一気に6強までレベルアップ。熊本地震である。まずは4月14日21時26分。3から5弱に2ランクアップ。 揺れた揺れた。起きない嫁子を慌てて起こし家を出た。それから近所の老人宅を回った。私が一番かと思い...
家族

第111話 我輩ハ夫デアル(2015年11月) 10KB

我輩は夫である。名前はまだない。17年前に拾われて此の方「フクチャン」という血統で呼ばれ、名前で呼ばれた事がない。我輩は夫であるがゆえ飼い主の幸せを求む。むろん子の幸せも求む。が、それは飼い主に属すオマケであって、父としてのそれよりも夫とし...
家族

第105話 ばあちゃんにあげたい(2015年2月) 9KB ☆

御歳91になる祖母がいる。嫁の祖父母も私の祖父母もポツポツ逝って、この祖母が最後の要になってしまった。以下、全力の親しみを込め「ばあちゃん」と呼ぶ。年に数回ばあちゃんを見舞う。ばあちゃんは柿が好きで三食柿でもいいと言う。仕事の繋がりで柿農家...
家族

第101話 そんな道子のガン騒動(2014年10月) 8KB

「これ絶対ヘンじゃない?」道子が首筋を触れと言ってきた。何だかピキッとして痛いらしい。触った。が、分からなかった。「何で分からんと?」道子は怒った。納得がいかないらしい。明らかな違和感があるらしく、首の痛みが手に腰に広がっている感じがするら...
家族

第96話 家出の達人(2014年5月) 13KB

反抗期の峠を越えた高校生ぐらいから家出を常用している。家出という言葉の響きは極めて悪い。が、色んな事を短期に収束させるという点において、これ以上の方法を私は知らない。嫌な事があってムシャクシャした時にジッとしていると、そのムシャクシャに押し...
家族

第94話 父子のバスケ(2014年3月) 9KB

小学校の四年五年六年と長女はバスケ部に在籍した。三年を通して応援団のポジションを譲る事はなかったが、何はともあれ辞めなかった事が素晴らしい。「最後の試合は気合を入れて観に行くぞ!」「絶対来んで!お願いだから来ないで下さい!」長女の嘆願虚しく...
家族

第71話 目線について(2012年1月) 5KB

「サンタさんて、おらんとばい」ある日、長女がそう言った。四年生であった。聞けば同級生から得た情報らしく、その「同級生の言い分」というのが実に面白い。サンタさんのプレゼントに赤いリボンが使われていたらしい。同級生はそのリボンに見覚えがあった。...
家族

第69話 十年~叡山など~(2011年11月) 18KB

この旅に同行している道子と太陽は歴史というものに興味がない。道子は美味いものが食えればいいと思っており、太陽は高いところに登れればいいと思っている。が、この町(大津市)は至るところに歴史が溢れている。三日目はグルメと登山を織り交ぜつつ歴史散...
家族

第65話 走る嫁、伴走する夫(2010年9月) 6KB

娘を叱る時だけ熱くなり、普段は冷え冷えしている。それが嫁である。昔の嫁は実に熱かった。男子寮の塀を余裕で乗り越え進入し、寮の二階を占拠した。男子寮なので男子便所しかなかったが何食わぬ顔で常用し、ションベンしてる同僚の横で歯を磨いた。後輩は非...
家族

第63話 一人いる夏の日(2010年7月) 14KB

嫁子供が埼玉に帰省している。従って、二週間ほど独身である。常日頃の私なら何かと予定を入れるところであるが、今回は溜まった仕事を少しでも片付けようと思い、特に予定を入れなかった。ただ、なるべく家にいないよう気を使った。私という人間は類稀に見る...
家族

第59話 新型騒動(2010年2月) 7KB

前話で書いた自動機を何とか一月中に立ち上げた。三日ほど出張し、客先に納め、阿蘇に戻ったのは2月3日。節分であった。家族で豆まきをやろうと急ぎ戻った父親であったが、留守にしていた我家はどうもそういう状況ではなかった。長女と三女がグッタリしてい...
家族

第57話 死に顔と畑(2009年12月) 8KB

嫁の祖父が亡くなった。「生きる醍醐味」のロゴにしている良い顔の祖父である。享年九十七と聞いており、死因は老衰、誰もがうなる大往生であった。祖父についての話は「生きる醍醐味」で何度か書いた。義父の葬式で始めて会い、会った瞬間に惚れこんだ。一目...
家族

第53話 爆弾の血(2009年7月) 8KB ☆

恐ろしい事が起こっている。娘たちが道子化しつつある。つい先日、ウチに営業マンが来た。福岡から来た営業マンだったが、母校が長陽村らしく、大いに話が弾んだ。そこへ保育園帰りの次女が現れた。「ただいまー!」いつものように事務所へ走ってきた次女であ...
家族

第50話 全滅の日(2009年5月) 9KB

二日ほど前、家族が全滅した。人類史上最強の健康体である嫁がダウンすると、続けて長女、そして三女が嘔吐した。次女は症状が軽かったものの気分が乗らないらしく終始ウダウダし、続けて私まで微熱と関節痛に襲われた。私が機能しない時、家庭は大いに回る。...
家族

第41話 アレルギー検査(2008年11月)13KB

秋に入り鼻が詰まるようになった。症状から見るに風邪ではない。何かアレルギーであろうと想像したが、特に調べようとは思わなかった。経験上、三日もすれば消えゆく事が分かっていたからだ。世の中には「ブタクサ」という雑草があるらしい。夏の終わりから秋...
家族

第39話 美菜について(2008年9月)10KB

変な夢をみた。ちょっと太っている年頃の女性が、「私は愛されてなかったから…」そう言って泣くところから始まった。年頃の女性は私の嫁に何か相談しているらしい。嫁も女性も喪服を着ている。「そんな事はないよ。お父さんは美菜ちゃんも好きだったよ」嫁は...
家族

第30話 釈迦、キリスト、そして道子(2008年6月) 10KB

「私は何も考えない」嫁・道子は常々自分の事をそう言っている。そんな事はあるまいと常日頃から旺盛な興味を持ち、じっくり嫁を眺めているが、恐ろしい事に本当に何も考えてない風向きがある。ある古老はこう言った。「死ぬ間際になって世ん中んこつがちぃっ...
家族

第23話 次女と母、そして家族(2008年4月) 13KB

前話に引き続き次女との二人旅について書こうとしている。長女と次女の三歳七ヶ月に至るまでの大きな違いは、母親との密着度にある。次女はヒルシュスプルング病という厄介な病気を持って生まれたために生後一年間は入退院を繰り返した。嫁は付き添い入院とい...
家族

第16話 日常温泉(2007年12月) 4KB

温泉が近い。自宅から徒歩四分弱のところに掛け流しの温泉があり、車を使えば五分圏内に十以上の温泉があるため、もう長いこと自宅の風呂に入っていない。お値段もリーズナブルで村民であれば二百円、子供は小学校まで無料なため、こうも燃料代が上がった今、...
家族

第15話 田舎暮らしの一ヶ月(2007年11月) 8KB

南阿蘇村へ越してき、早一ヶ月が経とうとしている。家は中古住宅を買った。前の持ち主は広島の方である。裏山の斜面に皮膚病に効く事で有名な秘湯があり、そこへ通うための別荘として買われていたらしい。近所の人の証言によると実に素晴らしいご夫婦だったよ...
家族

第14話 サラリーマン適性(2007年10月) 9KB

第十三話を書いてから約三ヶ月が過ぎてしまった。その間に退職、独立、引越しと様々な事が続き、実に慌しい日々を送ってしまったが、その日々を振り返るに、私はこういう状態が嫌いではないという事にぼんやり気付いた。むしろ好んでその方向へ進んでいる様を...
家族

第13話 一人の日(2007年7月) 3KB

約二週間、嫁と子供が埼玉に帰省している。人科最強の寂しがり屋である私は、一人っきりにならぬよう綿密な計画を立てたわけだが、誰も捕まらなかった日が一日だけできてしまった。7月27日である。仕事が終わって真っ暗の家に帰る。この時点で気が滅入るの...
家族

第8話 春の足音(2007年3月) 5KB ☆

その日の私は「ひたすらネジを締め続ける」という作業に没頭していた。久々に研究室を飛び出し、作業着に着替え、真っ黒になりながら現場でネジを締め続けていると一本の電話が鳴った。嫁からであった。「大変だよー! 幼稚園から電話があって春の熱が引かな...