生きる醍醐味

第157話 炎上さんの思い(2024年3月)

1日140文字、ツイッターという公開日記を始めて13年、初めて炎上なるものに遭遇した。それも人に言わせると歴史的大炎上、8000万回も見られたそう。ドイツの人口と一緒らしい。自分の事は自分が一番分からんゆえ何も言えんけど、僕は時代がズレてる...
生きる醍醐味

第156話 酒場で聞いた夫婦の話(2023年8月) 5KB NEW!

嫁子供が帰省して僕一人の生活が2週間も続いた。暗い家に帰るのは嫌なので人の家に泊まったり呑み屋に泊めてもらったり、努めて家に帰らぬようにしてたら一人の中年につかまった。行き付けの呑み屋でたまに会う人で歳は僕より少し上、50歳くらいか。大企業...
モノ

第155話 全集中とスマホ(2022年4月) 4KB

四半世紀前か、治工具設計を学んだ際「モノの誉は単機能」と教わった。「一つの機能に集中せよ、他は考えるな、考えたとしても単機能が極まった後それを展開すればいい、何やかんやで単機能が無敵」作り手の話だと思ってたけど最近は使い手にも言えるなとスマ...

第154話 沁みてた説教(2021年12月) 4KB

中学から通い続けた床屋のオヤジが店をやめ2年になる。一時やめたかやめてないのか分からない時期があって、オヤジが死ぬまで浮気はしないと急場をしのぐバリカンを買った。で、嫁に刈ってもらい、あれよあれよと2年になる。その嫁が「あー失敗したー!床屋...
家族

第153話 菜穂のサンキュー(2021年11月) 13KB

我家にはサンナナ旅行という儀式がある。娘が三歳七ヶ月の時に父と関西へ二人旅するというもので、これを境に幼児から児童になるらしい。「らしい」と書いたのには理由があって、三女と四女が12歳差。つまり干支一周、12年ぶりの儀式で、そんな儀式すっか...

第152話 K老人と葬式(2021年9月) 7KB ☆

テニス仲間のK老人が亡くなった。78歳だそう。高校まで南阿蘇で過ごし、それから製鉄の仕事で北九州や大分を転々とし、定年後に南阿蘇へ帰ってきたらしい。それからは軟式庭球の老人として有名だ。地元に恩返しがしたいという事で中学校のソフトテニス部コ...

第151話 気になる気の話(2021年5月) 4KB

幸せ研究家は自分が幸せになる事ばかり考えてる。で、中間報告をしたい。幸せの要諦は気の具合にあると思ってる。気と言っても気功とかスピリチュアルの氣とは違い我々が何気なく使ってる気分の気だ。人間には生まれながらに備わった陽気陰気のレベルがあって...

第150話 老人の日本語(2020年5月) 5KB

物事を複雑にしたがる人には必ず裏がある。税務と労務を見るといい。難解な日本語の羅列で物事を複雑にし、そこに仕事を作り、役人が天下る仕組を作った。何と頭がいいのだろう。いいのか悪いのかよく分からないぐらい頭がいい。更に言いたい。ポッと出の横文...

第149話 走れヒロノリ(2020年1月) 19KB

中学時代の同級生が徳島にいる。昨年4月から転勤で行ってて今年3月には離れると言う。それはまずい。必ず遊びに行くと約束していて、他の同級生もみんな知ってる。「あいつ徳島来た?」「来る来る言うて結局来んかった」「あいつ口だけやねー」そうなる事態...

第148話 昭和の残像(2019年12月) 7KB

男はつらいよ50周年を記念して過去の名作を映画館で上映するという企画がある。が、それは東京大阪の話で田舎の人間は行けないぞって思っていたら福岡でやるという情報を得た。それも昭和21年創業の古い古い映画館の一番小さなホールでやるらしい。「なに...

第147話 めくらのおっちゃん(2019年11月) 4KB

ふと思い出し、ムダにイライラしている。小学校の頃、通学路に「めくらのおっちゃん」と呼ばれる目の不自由なおじさんがいて飴をくれるからしょっちゅう遊びに寄った。それがなぜか地域の問題になって学校でビンタ三発打たれた。一発目は「めくらのおっちゃん...

第146話 Sさんの着地(2019年8月) 5KB

言葉ってのは凡そ嘘だ。行動のみを抽出し、本質の理解に努めないと近々痛い目にあう。呑み友達のSさんはメチャクチャ喋る。特に呑み始めると本人も理解できない愚痴を延々発す。相手が聞いてようが聞いてまいがそんな事はどうでもいい。これは心にたまった澱...
家族

第145話 腰痛物語2(2019年7月) 10KB

二ヵ月半、生きる醍醐味を書かなかった。なぜか?腰が痛くて長時間パソコンする気分にならなかった。手帳によると令和元年になった瞬間(5月1日)から痛み始め、5月12日、もうどうにもならず前回(腰痛物語1)お世話になった気功師に頼った。が、今回は...
仕事

第144話 行商のまねごと(2019年4月) 5KB

何度も書くが僕の憧れは寅さん(男はつらいよ)だ。糸の切れたタコみたい(おいちゃんの言葉)にふらふらふらふら生きてみたい。が、僕は寅さんと違って独身じゃないし、子供は4人もいるし、作業場ないと今の仕事も成り立たない。ないない尽くしで憧れは遠く...
モノ

第143話 ネクタイしません(2019年3月) 5KB ☆

三女の卒業式だ。嫁はスーツで行けと言う。長女の時は作業着で行った。次女の時はスーツで行った。今回は僕の番、作業着で行きたい。が、いい歳だからスーツで行けと嫁が譲らぬ。「ちゃんとしてよ」「ちゃんとしてる、何度も言うが作業着は技術屋の正装、汚れ...
家族

第142話 隠せ!(2019年2月) 5KB

嫁が長女を産んだのは26歳、それから2年越しで3人の子を産み、41歳で4人目を産んだ。何が辛いって全てにおいて気力が萎え、全くやる気が湧かないそう。更に体も微妙らしく尿漏れが一番ヤバいと言う。夫である僕はそれを笑い飛ばした。「俺は老眼と膝と...

第141話 嫉妬した死に様(2019年1月) 9KB

男はつらいよ、寅さんファンのお父さんが亡くなった。同級生の父親で学生時代からお世話になってるから四半世紀の付き合いだ。その家は常に門戸が開いていて、家人不在であろうと勝手に上がって先に呑んでもよい家で、ハッキリ言って自宅より居心地よかった。...
仕事

第140話 大袈裟な呼び鈴(2018年10月) 5KB

僕には男の子がいない。だから少年が来ると異常にかまい、その反応をジッと見てしまう。彼らは何が好きなのか。彼らのツボはどこなのか。そこに男の原点があると思うし、そこを目指して突っ走れば男という少し足りない生きものの本質が見える気がする。仕事柄...
技術

第139話 顔が大きくなる板(2018年9月) 9KB

先日メーカーフェアで顔が大きくなる箱というのをかぶった。本当ならかぶりたくなかった。そんなモノかぶらなくても私は顔がデカいと言われていて、小さくなるならまだしも、わざわざ大きくする必要性を微塵も感じなかった。が、知り合いの林さん(インターネ...
家族

第138話 嫁に使って終わり(2018年8月) 7KB

ご存知の通り私はカネがなくなると働く。先月マジでなくなった。働かねばならない。今年は何と言っても四女が生まれた。更に上の娘が三人揃って修学旅行。更に更に古い付き合いの先輩から「捻り板金の使い道を考えて」と頼まれ(第137話参照)やたらカネを...
仕事

第137話 愛搬送マシーン(2018年6月) 10KB

高専の先輩にねじり板金屋さんがいる。鉄の板をぞうきん絞るみたいに捻り、高精度なネジを作る。何に使われているのかというと太陽光発電の基礎で、大地にねじ込んで使う。 [使い方を間違えた捻り板金] これが売れに売れたそう。が、一気に売れるモノはス...
家族

第136話 赤ちゃんのいる家(2018年3月) 10KB

2月9日「肉の日」に産まれた四女は2月14日「チョコの日」に我家へ来た。記念日はデブっぽいのに体は小さく、身長48センチ体重2キロちょいしかなかった。病院へ迎えに行きながら搬送手段を考えた。抱っこは危険だし、チャイルドシートは未熟児寸前だか...
家族

第135話 その日~四十路の嫁が出産した日~(2018年2月) 13KB

その日は突然こなかった。序章があった。 2月2日、予定日十日前。弟が牛肉を持ってやってきた。高い肉らしい。私も嫁も三姉妹も慌てた。先に食わなきゃ誰かに食われる、家族の掟にならい我先に慌てて食った。その夜、嫁は激しい腹痛に見舞われた。「これは...

第134話 男と女と帯広のママ(2018年1月) 7KB

居酒屋で呑んでたら隣の若いカップルが喧嘩を始めた。理由は知らない。知らないけれど女が一方的に怒り、男は女が呼吸するタイミングを待って「俺は悪くない」と言った。女は泣いて暴れた。男は「恥ずかしいから店を出よう」と女の手を引いた。が、女は泣いて...

第133話 合わない二人(2017年12月) 4KB ☆

その人は経営支援、つまりはコンサルタントで飯を食ってるらしい。ある呑み会で席が隣になり、間を持たせるため無理矢理話しかけた。話せば話すほど嫌な奴だと思った。横文字連発で経営が何たるかを語り、机上の空論を流暢に披露、人の理屈をバカにした。向こ...
南阿蘇

第132話 鍋の底にいるんだ(2017年11月) 11KB

当たり前の事を書く。南阿蘇という場所は世界一のカルデラの中にある。マグマをボコボコ噴出し、地面の下が空っぽになり、ドーンと沈んで鍋みたいな地形になった。鍋のふちが外輪山で、その鍋は流行りの仕切り鍋みたいに中央ちょっと南側で仕切られていて、そ...
家族

第131話 おじさんのまねごと(2017年8月) 15KB

何度も書いているが寅さん(男はつらいよ)に焦がれている。寅さんには甥っ子がいて、おじさんのまねごとをしたりしなかったりする。「僕もまねごとしたい」常々そう叫んでいたら夏休みに甥と姪が来た。二人は埼玉生まれの埼玉育ち、比較的都会っ子だから田舎...
家族

第130話 その日~四十路の嫁が妊娠した日~(2017年7月) 11KB ☆

ここ数日、嫁は常に気だるかった。何を言っても反応は鈍く、家事は手を抜き、来客の予定を伝えると露骨に嫌がった。「はぁストレス、はぁ春日部(実家)帰りたい」何度もその声が聞こえ、聞こえる度に私は憂鬱になった。 私は古い。女性の権利が云々と、集団...
家族

第129話 時間を守らぬ人を考察す(2017年5月)5KB

嫁がまったく時間を守らぬ。知り合って19年になるけれど守ったためしがない。「ちゃんと急いでるの!急いでるけどなぜか間に合わないの!」判で押した言い訳を聞きつつ、ふと守らぬ人の共通点に気付いた。「言い訳が一緒だ」身内じゃないから名前は出せぬが...

第128話 長さんとタコ社長(2017年4月) 8KB

長さんという高専時代の友がいる。そんなに一緒にいる気はしないけど、ふと昔の写真を見たら、嫁と付き合う時も、プロポーズの時も、長女の出産の時も、お宮参りの時も、幼稚園の運動会も、長女の立志式も、先日開かれた親族総出のお祝いにも長さんが写ってい...
仕事

第127話 信じられない寂しがり(2017年3月) 13KB

自分の適性を知る事が人生を有意義に過ごす要諦だと思っている。従って自分に対する研究はそれなりにやったつもりでいるし、そうやって今を作った自負もある。が、寂しがりという点において少々認識が甘かった。分かっちゃいたが、信じられない結果を叩き付け...
家族

第126話 八恵とふたりで(2017年2月) 18KB

三歳七ヶ月の娘と二人旅に出るサンナナ旅行を三人娘全員とやった。自慢じゃないが私は一度もオムツを替えた事がなく、この旅が父親への登竜門で、この旅を経て何となく父親になった気がする。それから娘たちは勝手に成長し、飯さえ食わせりゃそれなりに大きく...

第125話 雨のなかがみ放浪記2(2017年1月) 10KB

恩納村から国道58号線を南へゆく。この道は沖縄の1号線で戦後アメリカが作った。「古い道、琉球の道はなかろうか?」古道好きとしては古い道を歩きたい。幸い雨もやんでいたので国道を離れた。小さな集落で道を聞いた。米寿を優に越えてそうなおじいと会っ...

第124話 寂しがりシンパシー(2016年12月) 11KB ☆

知らぬ老婆から電話があった。自分の心音がうるさくて眠れないと言う。「それはカラクリ屋じゃなく、かかり付けの病院に言われた方がいいのでは?」「病院はうち合っちゃくれん」「何かこうやったら良さそうってアイデアをお持ちですか?」「体に電気を流して...

第123話 雨のなかがみ放浪記1(2016年11月) 12KB

金武町を離れ中頭(なかがみ)地区に入った。前に書いたが沖縄本島は三つの地区に分かれていて、中頭が本島の真ん中にあたる。この日も特に行くところを決めておらず、天気は雨、空を見て行き先を決めようと思った。南の空が明るかった。南へ下った。 カーナ...

第122話 雨のくにがみ放浪記4(2016年10月)8KB

ちょっとだけ雨が上がった。沖縄の晴れは海を渡って来るらしい。 遠くに白い線が見え、その線がダーッと押し寄せ晴れになった。こうなるとタコライスなど捨てて歴史散策をしようという気分になった。古宇利島と屋我地島を歩いて一周するのも悪くない。二つの...

第121話 雨のくにがみ放浪記3(2016年9月)19KB

沖縄本島は今も三つに分かれている。放浪中の「くにがみ」はその一つで国頭と書く。他に中頭(なかがみ)島尻(しまじり)とあって、鎌倉時代から室町時代、沖縄でいう三山時代の国割が凡そ踏襲されている。古琉球の国割である。「沖縄はね、観光客にはいいけ...
南阿蘇

第120話 夏パラダイス板東池(2016年8月)10KB

地震後、幾つも水源が枯れた。「枯れたぶんはどこへゆくのだろう?」不思議に思っていたら色んなところで水が噴き出したり水量が増えたりした。一つの事例として板東さんちを紹介する。板東さんは水源の隣に家を借りていて、地震後危うく水没しかけた。 「ど...

第119話 雨のくにがみ放浪記2(2016年7月)16KB

昼をたっぷり過ぎてから名護の街を出た。ひょんな事から名護に長居してしまった。これも旅の醍醐味で、決められたルートをゆく観光ツアーでは醍醐味は得難い。この日は国頭村の奥という集落で旅人の間で名高い奥仙人に会うと決めていた。この奥仙人は噂による...

第118話 雨のくにがみ放浪記1(2016年6月)21KB

沖縄との接点がなかった。全国で唯一行った事ない場所、それが沖縄で、特に知り合いもいなかった。が、今回なんと仕事で沖縄へ行く事になった。沖縄高専でモノづくりの打ち合わせをやるらしい。「一緒に行くか?」「行きます!行かせて下さい!赤字でもやりた...
仕事

第117話 200個作らんといかん(2016年5月)17KB

東京のインターネットの人たちが熊本地震に関するチャリティーイベントをやるらしく、小声で相談された。「チャリティーで配るモノを作って欲しいんよ」「何を作ればいいんですか?」「粗品」常に粗末な品を作っているので自分で言うのも何だが粗品の製作には...
家族

第116話 熊本地震とアソカラ(2016年4月) 24KB ☆

1:前震 最大経験震度レベル3だったのに一気に6強までレベルアップ。熊本地震である。まずは4月14日21時26分。3から5弱に2ランクアップ。 揺れた揺れた。起きない嫁子を慌てて起こし家を出た。それから近所の老人宅を回った。私が一番かと思い...
仕事

第115話 僕の仕事(2016年3月) 17KB ☆

僕の仕事はモノづくり。他と何が違うって、一人でやってる事と、「こんな感じに作って」ザッとした依頼で着手する。それがセールスポイント。大抵のモノづくり屋は仕様書がないと請けない。仕様書は責任の分担書。「それがないとズルズルいって潰れるよ」モノ...

第114話 島原城下四つの靴(2016年2月) 26KB

次女が「船に乗りたい」と言った。2月10日の朝だった。父は考えた。久しく旅に出ていない。そろそろ子供たちに旅の醍醐味を教えてもいい頃だろう。が、歩くと言うたら付いて来ないに違いない。「父の歩くは危険」それは嫁子の口癖で、何度か一緒に歩いたら...
仕事

第113話 自営業者と経営者(2016年1月) 7KB

辞書を見て「自営」の項を引いた。[自力で経営する事、自立して生計を営む事]後者は分かるけど前者は何だか違う気がした。「経営」という言葉に対する違和感だった。去年は多くの経営者と会った。「経営者の会」みたいな勉強会(単なる呑み会)に入った事で...

第112話 腰痛物語(2015年12月) 15KB

四十路手前に膝を痛めた。パキパキ、コキコキ鳴り出して、鈍痛走って膨らんで、次第に曲がらなくなった。病院へ行き、レントゲンを撮り、水を抜いてもらった。軟骨がすり減って炎症を起こしているらしい。この病院は消防団の先輩が勤めているから選んだ。整形...
家族

第111話 我輩ハ夫デアル(2015年11月) 10KB

我輩は夫である。名前はまだない。17年前に拾われて此の方「フクチャン」という血統で呼ばれ、名前で呼ばれた事がない。我輩は夫であるがゆえ飼い主の幸せを求む。むろん子の幸せも求む。が、それは飼い主に属すオマケであって、父としてのそれよりも夫とし...
モノ

第110話 アルミフレームストラップ(2015年8月) 9KB ☆

呑み会に呼ばれた。持ち寄りらしい。手土産は何にしよう。みんなに喜ばれ、且つカラクリ屋っぽいものがいい。土産はあなどれない。忘れたくても忘れられない出来事がある。自営業の会という呑み会を開いた。ヤマメ屋はヤマメを使った惣菜を持って来た。パン屋...

第109話 消化試合の鬼(2015年7月) 4KB

ソフトテニスで中学生のコーチをしている。その日は中体連の県大会。空き時間があったので、何か面白いものはないかと、フラフラフラフラ歩いていると聞き捨てならぬ日本語が聞こえてきた。「頼んだぞ!消化試合の鬼!」少年たちは泣いていた。送り出す二人に...
南阿蘇

第108話 すぐそこの色々(2015年5月) 9KB

熊本平野からもバッチリ見えるので気になっている方も多いと思うが山の斜面に二つの噴気孔がある。 調子のいい時は雲を成すほど噴いていて、実に不気味。歴史的にもこの辺りは湯の谷大変という水蒸気爆発(1816)があって、宗徒の湯谷を吹っ飛ばしている...
モノ

第107話 下半身ポスト(2015年4月) 9KB

工場勤めを辞める時、モノ作り屋はやめようと思った。当時、ものを書く面々に囲まれていて書く仕事に憧れた。次は出張多めの営業マンに憧れた。その次は一本気の旋盤職人に憧れた。経営者にもフーテンの寅さんにも憧れた。公務員だけ憧れなかった。結局色々や...

第106話 客人去り難し(2015年3月) 15KB

知らぬ人から手紙が来た。「一度会って話がしたい」と言う。全国ネットのお笑い番組で私を発見したらしく、すぐさま筆を執ったそう。話したい内容については一切触れてなかった。兎にも角にも筆を執ったという事実、そして会いたいという念が綴られていた。す...
家族

第105話 ばあちゃんにあげたい(2015年2月) 9KB ☆

御歳91になる祖母がいる。嫁の祖父母も私の祖父母もポツポツ逝って、この祖母が最後の要になってしまった。以下、全力の親しみを込め「ばあちゃん」と呼ぶ。年に数回ばあちゃんを見舞う。ばあちゃんは柿が好きで三食柿でもいいと言う。仕事の繋がりで柿農家...

第104話 老若男女髪雑記(2015年1月) 9KB

幼少より我慢できない笑いがある。ハゲである。「ハゲデアル」と書いた時点で喉元まで熱い何かが込み上げてくる。活字の時点でイエローカード。声に出したらレッドカード。隠そうものなら即終了。ハゲは反則極まりない。私のハゲ初見は祖父であった。本田宗一...

第103話 冷水峠のオオネジ様(2014年12月) 14KB

2014年はホント赤字が凄かった。特に後半は要らん事ばかりしてて、その極め付けがメーカーフェアというモノづくりの祭典に向けられた。「これ要る?要らんなぁ、作ったとして、これをどこに置くのだろう?」自問自答を繰り返し、分かっているのに名刺交換...

第102話 ごめんよ青春!(2014年11月) 7KB

子供が好きだ。子供というより、煌いてる人間が好きで、そういう風に人生を終えたいと常々思っている。煌きは雑念なき本気に宿る。つまり生きものとしての本能や反射であり、そういう溌剌としたものを常に感じて生きていたい。が、娑婆を生きるという事は生き...
家族

第101話 そんな道子のガン騒動(2014年10月) 8KB

「これ絶対ヘンじゃない?」道子が首筋を触れと言ってきた。何だかピキッとして痛いらしい。触った。が、分からなかった。「何で分からんと?」道子は怒った。納得がいかないらしい。明らかな違和感があるらしく、首の痛みが手に腰に広がっている感じがするら...
仕事

第100話 月賦で頼む!追徴課税!(2014年9月) 11KB ☆

恥ずかしい話だが税務の事がさっぱり分からず今に至っている。阿蘇カラクリ研究所は2007年10月に創業した。その際、サルでも分かる青色申告みたいな超初心者向けのマニュアル本を買った。読んだ。さっぱり分からなかった。身近な人に教えを乞うべく実父...

第99話 東京下町散策記3(2014年8月) 17KB

立石は呑み人の聖地という噂を聞いた。が、私は信じない。山本リンダも言ってるように噂を信じちゃいけない。特に飲食の類はメディアと行政がスクラムを組み、「まちおこし」と銘打って色んなものを操作している。「資本と権力に惑わされちゃいかん!市井の真...

第98話 東京下町散策記2(2014年7月) 12KB

京成線は高砂駅で分岐する。柴又へゆくには金町線に乗り換える必要がある。乗り換えが遠かった。改札を抜ける必要があった。同じ社線なのになぜ出なきゃならんのか。分からん。このシステムがよく分からぬが、まさか寅さん好きをカウントしているのではないか...

第97話 東京下町散策記1(2014年6月) 16KB

二年前、東京ラブストーリーにハマり、鈴木保奈美が好きになった。それから保奈美で暮らし、今やっと衣替えの時期を迎えた。「男はつらいよ」である。再放送をたまたま見た。たまたま見たのが第11話「寅次郎忘れな草」リリー初登場の回でまさに大当たり。涙...
家族

第96話 家出の達人(2014年5月) 13KB

反抗期の峠を越えた高校生ぐらいから家出を常用している。家出という言葉の響きは極めて悪い。が、色んな事を短期に収束させるという点において、これ以上の方法を私は知らない。嫌な事があってムシャクシャした時にジッとしていると、そのムシャクシャに押し...
モノ

第95話 愛、それは作業着(2014年4月) 10KB ☆

長女の卒業と入学があって、ここ数日式典が多かった。式典は正装で臨まねばならない。技術屋の正装、それは作業着であって他は知らない。まずは卒業式。私は洗い立ての作業着に身を包んだ。メーカーは自重堂。作業着の一流メーカーだから正装として非の打ちど...
家族

第94話 父子のバスケ(2014年3月) 9KB

小学校の四年五年六年と長女はバスケ部に在籍した。三年を通して応援団のポジションを譲る事はなかったが、何はともあれ辞めなかった事が素晴らしい。「最後の試合は気合を入れて観に行くぞ!」「絶対来んで!お願いだから来ないで下さい!」長女の嘆願虚しく...

第93話 美術とは何ぞや?(2014年2月) 12KB

美術の人がやって来た。申し訳ないが最初猛烈に警戒した。阿蘇にはアーティストと呼ばれる人が多い。色んなアーティストと呑んだが、みんな言ってる事が意味不明で、やたら横文字を使いたがった。先日メーカーフェアというモノづくりの祭典に参加した時もアー...

第92話 ウミンチュとヤマンチュ(2014年1月) 11KB

野釜島を歩いた。この島は天草の入口・大矢野に属し、立派な橋で上島と繋がっている。地元駐在さんの歓送迎会があり、バスに乗ったら野釜島に連れて来られた。バスを降りて旅館にチェックインし、観光地図を見、ここが野釜島である事を知った。「なぜ、ここに...
生きる醍醐味

第91話 痛風座談会(2013年12月) 7KB ☆

健康診断の結果が来なかった。嫁には来ていた。村に尋ねたら「指導したいので取りに来い」と言う。指導の内容は分かっていた。「太り過ぎ!呑むな!食うな!運動しろ!」過去に指導を受けた事もあり凡そ察しが付いた。嫁に行ってもらった。が、嫁は手ぶらで帰...

第90話 回転寿司にて(2013年11月) 7KB ☆

凄い集団が来た。回転寿司に文明拒否の四人組である。昨今の回転寿司はタッチパネルで注文が普通だが「そういうモノは一切やらん」と老年四人組は言う。「ここに写真付きのメニューがあるじゃない!これで注文するわ!」四人組、頑として引かない。「そう言わ...

第89話 末っ子天王山(2013年10月) 13KB

思い込みで憧れている。「末っ子ってどんな気分で世の中を見ているのだろう?」末っ子が好きだ。好きだから嫁も末っ子、親友も末っ子、末っ子は気分がいい。彼らに共通するのはテキトー。感じで書く適当とは違い、カタカナで書くテキトー、つまり森羅万象を右...
仕事

第88話 メイカーフェアとアクセス数(2013年8月) 20KB

メイカーフェアというものに誘われた。今もって詳細を理解してないが作る人のお祭らしく世界的なイベントらしい。お祭が好きである。展示会が好きで色んなところに出展した。例えば「機械要素技術展」これは加工品や機械部品の業者がズラリと並ぶ。例えば「モ...

第87話 瀋陽雑記3(2013年7月) 21KB

仕事が終わってしまった。終わったというよりやれる事がなくなってしまった。後の作業は部品を待たねばならず、線引きも「これ以降は現地対応」となっていた。技術担当の中国人に残務を説明し、昼食を食い終わると完全無欠の暇人になった。「これから何しまし...

第86話 瀋陽雑記2(2013年6月) 10KB

四つ星ホテルから出張先の工場まで車で40分ほどかかるらしい。ホテル下に迎えの車が来るそうで、午前6時45分、定刻5分前、指定の場所に立った。車は次から次に来た。色んな人をピックアップし、方々へ消えて行った。どれが送迎の車か全く分からなかった...

第85話 瀋陽雑記1(2013年5月) 11KB

その話は数年前からあった。「中国へ飛べ」という話である。最初は心が躍った。知らない街や異文化に強い憧れがある。十年以上旅人をやっているというのはそういう事で、それ以上の理由はない。知らない街で知らない人と美味い酒が呑みたい。が、日本語、それ...

第84話 Nの話(2013年3月) 8KB ☆

Nという地元の友がいる。むろん呑む。酒癖はいい。暴れもせず説教臭くもない。ただ呑み過ぎると魂が飛ぶ。十代半ばNと頻繁に呑み歩いた。Nは呑み過ぎて寝ると意味不明な言葉を発して飛び起きる。次いで壁に向かって喋り出す。(座敷わらしでも見えるのか?...

第83話 地域の子(2013年2月) 8KB

「ま!待てい!」小さい其奴に拳固の一発でも食らわせねば気がすまぬ。が、動けない。三度目であった。今回は隣村のスーパーで買い物中、不意に、そう、芯から無防備な状態でやられてしまった。その時、私の目線は惣菜にあった。頭の中も惣菜の物色一つで余念...

第82話 呑みに合う人アホな人(2013年1月) 7KB

好みに寄る話だが呑みに合う人がいる。私の場合、兎角アホがいい。アホとは何か。その言葉を手元の辞書で引くと、 (形動)知能が劣っているさま。また、そのような人、行動。おろか。たわけ。ばか。 つまり最強のけなし言葉として君臨している。が、それは...
仕事

第81話 メディアと熱と開放日(2012年12月) 6KB

年四回「開放日」を設けている。去年までは「ロボットお披露目会」と呼んでいたが、おみくじロボを壊した事で「ロボット」の文言を外し、ついでに「お披露目」という派手な文言も改めた。始まりは四年前。作ったモノを人に見せたいという至極簡単な理由から「...

第80話 鈴木保奈美に惚れた(2012年11月) 7KB

私はTVドラマを見ない。ドラマは妄想の中にあって、それで事足りている。嫁はTVドラマが大好き。国籍問わず日夜見てるがその挙動にドラマはない。妄想も実に冷めていて心の線なるものがあるとすれば定規で引いた真っ直ぐな線が地平の彼方に突っ走っている...
生きる醍醐味

第79話 待てない男(2012年10月) 7KB

出先であった。時計を見ると16時30分、もう少しでネオンに灯が点く頃だろう。(今日は家に帰るのやめ! 呑んで帰ろう!)思うや最初に電話したのはSというミカン農家で高専時代の級友であった。彼は農家だから勤め人のように「明日がある」など定型文を...

第78話 頼むけん来んで!(2012年9月) 8KB ☆

私は腹が弱い。胃炎、肝炎、腸炎、十二指腸潰瘍、それら軽度の内臓病を十代で味わい尽くし、二十代にはピロリ菌をやっつけ、ついにはサルコイドーシスという難病指定まで頂いた。埼玉の名医曰く腹の弱い人は遺伝の可能性が高いらしく言われて調べて驚いた。実...

第77話 呑み人逝く(2012年8月) 13KB

7月29日、呑み友達のSさんが不意に逝った。享年63歳。死因は心筋梗塞らしい。メールの受信箱を見てみると7月12日の夜Sさんからメールが来ている。阿蘇地方の集中豪雨を軽く心配されているが、本題は自慢の植木が大雨で枯れてしまった。その事を嘆か...
モノ

第76話 トニックの衝撃(2012年7月) 4KB

夏がくれば思い出すのは「はるかな尾瀬」ばかりではない。「トニックの衝撃」もある。そもそも私の体は薬剤に対する反応が過敏なようで、造影剤で猛烈な薬疹が出たり、リポビタンDで眠れなくなったり、ピンクの小粒で丸三日下痢になったりと実に弱い。人間に...
技術

第75話 阿蘇、カラクリ、六年目(2012年6月) 7KB

昨年末「あの頃ボックス」という昭和歌謡を聴くための部屋を作った。個人的に70年80年代の昭和歌謡が好きで、そこに力点を置いていたわけだが、酔ったお客さん、どうも気に入らないらしく色んな苦情を頂いた。「ひばりが足りない! これで昭和は語れない...
技術

第74話 フェイスブックをやってみた(2012年5月) 8KB

「わさもん」という言葉がある。熊本の方言で「新しもの好き」の事であるが、熊本はそのタイプが多いらしい。振り返れば私の実父は随所にわさもんであった。CD出始めの頃、誰よりも早くCDラジカセを買ってきた。歌が好きなわけでもなく、音質にこだわるわ...
モノ

第73話 大増殖、そしてショッカー(2012年4月) 6KB ☆

くまモンというキャラクターがいる。熊本県の広報担当キャラクターで、県下では知らぬ人がいない。右も左もくまモン。博多に行っても鹿児島に行ってもくまモン。衣食住、色んなところにくまモンがいて、その包囲網は徐々に狭まりつつある。人は単一のモノに囲...

第72話 女子大生に逢えません(2012年3月) 7KB

私はマジメな技術者だから浮かれてはいない。しかし男である。その点、浮かれてはいないが少しだけ浮いていたようにも思える。なぜなら今、これを書きつつ私は酷く落胆している。高いところから滑り落ち、全身の骨がバラバラに砕けた、そんな感じである。3月...
家族

第71話 目線について(2012年1月) 5KB

「サンタさんて、おらんとばい」ある日、長女がそう言った。四年生であった。聞けば同級生から得た情報らしく、その「同級生の言い分」というのが実に面白い。サンタさんのプレゼントに赤いリボンが使われていたらしい。同級生はそのリボンに見覚えがあった。...

第70話 渡良瀬川の偉人の話(2011年12月) 15KB

投稿者を未だ発見できずにいるが、昨年末、私が作った「四面おみくじロボット」がナニコレ珍百景に採り上げられた。それから計4回くだらない作品を採り上げてもらっているが、その縁で実に興味深い人を紹介してもらった。「福山さんと似た人がいます、茨城に...
家族

第69話 十年~叡山など~(2011年11月) 18KB

この旅に同行している道子と太陽は歴史というものに興味がない。道子は美味いものが食えればいいと思っており、太陽は高いところに登れればいいと思っている。が、この町(大津市)は至るところに歴史が溢れている。三日目はグルメと登山を織り交ぜつつ歴史散...

第68話 十年~古都大津~(2011年2月) 11KB

私は電車に揺られていた。1リットルのポカリで口を潤し、緊急事態に備えドア脇に立っていた。二日酔いは昼を過ぎても抜けず、視界に広がる靄は依然消えなかった。出すものは全て出したつもりであるが、毛穴からアルコールが噴き出しているらしく、周りに人が...

第67話 十年~北新地~(2011年1月) 11KB

気付けば十年経った。結婚生活である。商業主義に乗っかればキラリと光るダイヤモンドを贈るところだが、嫁は「そんなものいらん」と言う。何もやらんわけにはいかんので、夜な夜なピロートークで聞いたところ「美味いものが食いたい」ときた。なるほど、それ...

第66話 コスモスにて(2010年11月) 8KB ☆

コスモスといっても花の事ではない。花の名を冠したドラッグストアの事である。熊本県内、右も左も緑色のコスモスが建ち、田舎にもある。関東圏では見ないので福岡発のマツモトキヨシかと思っていたが、出は宮崎らしい。コスモスのホームページを見てみた。ビ...
家族

第65話 走る嫁、伴走する夫(2010年9月) 6KB

娘を叱る時だけ熱くなり、普段は冷え冷えしている。それが嫁である。昔の嫁は実に熱かった。男子寮の塀を余裕で乗り越え進入し、寮の二階を占拠した。男子寮なので男子便所しかなかったが何食わぬ顔で常用し、ションベンしてる同僚の横で歯を磨いた。後輩は非...

第64話 普通に築地松(2010年8月) 13KB

何となく出雲へゆく事になった。前話で書いたが嫁子供が埼玉に帰省しており、それを迎えるため車で埼玉に向かった。8月3日であった。埼玉に着いた私は長時間の運転に疲れていたが、義母も疲れていた。丸二週間も田舎の三人娘と付き合った義母は見た目こそ変...
家族

第63話 一人いる夏の日(2010年7月) 14KB

嫁子供が埼玉に帰省している。従って、二週間ほど独身である。常日頃の私なら何かと予定を入れるところであるが、今回は溜まった仕事を少しでも片付けようと思い、特に予定を入れなかった。ただ、なるべく家にいないよう気を使った。私という人間は類稀に見る...
仕事

第62話 雨とモノづくり(2010年6月) 8KB

昨年はモノづくりが暇であった。暇だから色んな事にチャレンジしたが今年はどうもいけない。モノづくりが忙しい。年明けから工場用設備の依頼が来始め、春先には狭い作業場が組立待ちの部材でいっぱいになった。そもそもアソカラの作業場は狭い。6坪しかなく...
仕事

第61話 新入社員(2010年5月) 8KB

阿蘇カラクリ研究所に新入社員が入った。嫁である。「子育て」という印籠を持ち、日々奥様会に忙しかった嫁であるが、三女が保育園に行き始めた事で日中の印籠を失ってしまった。それで観念したらしい。4月12日。娘三人を送り出し、掃除、洗濯を終えた嫁が...
生きる醍醐味

第60話 ふらりゆく(2010年3月) 14KB

3月12日、ふと酒が呑みたくなった。手元の時計を見ると13時、外に出ると暖かな春の風が吹いていた。昨日は大雪で一時は靴が埋まるほど積もった阿蘇地域であるが、庭に白いものは見当たらなかった。春の陽気が溶かしてしまったらしい。隣町に住む友人の勤...
家族

第59話 新型騒動(2010年2月) 7KB

前話で書いた自動機を何とか一月中に立ち上げた。三日ほど出張し、客先に納め、阿蘇に戻ったのは2月3日。節分であった。家族で豆まきをやろうと急ぎ戻った父親であったが、留守にしていた我家はどうもそういう状況ではなかった。長女と三女がグッタリしてい...
技術

第58話 土日消ゆ(2010年1月) 8KB

その仕事、納期は25日であった。バタバタと配線し、チェックを終え、火(電気の事)を入れたのが20日で、22日にソフトを作り始めた。私はこのソフト作成という地味な作業が大嫌いで、できれば人に振りたいと常々思っているのだが、振ってしまえばその後...