生きる醍醐味

家族

第57話 死に顔と畑(2009年12月) 8KB

嫁の祖父が亡くなった。「生きる醍醐味」のロゴにしている良い顔の祖父である。享年九十七と聞いており、死因は老衰、誰もがうなる大往生であった。祖父についての話は「生きる醍醐味」で何度か書いた。義父の葬式で始めて会い、会った瞬間に惚れこんだ。一目...

第56話 教育者A(2009年10月) 15KB

世の中に変わった人は多かれど、こうも変わった人は稀ではないか。宮崎のAさんである。Aさんとの出会いは偶然であった。椎葉村へ行こうと思ったのも偶然だし、近くを通ったのも偶然、看板を目にしたのも偶然、興味がない民俗学になぜか惹かれ、脱線し、Aさ...

第55話 泣けた(2009年9月) 6KB ☆

阿蘇市のスーパーへフラリと出かけた。これといった用事があるわけではなかったが、日曜ではあるし、翌週からは「谷人たちの美術館」で多忙になるため、家族揃って少しだけ離れた場所へ買い物に出かけた。習慣というのは恐ろしいもので、懐かしい風景を見てし...

第54話 汗と涙と男と女(2009年8月) 13KB

あの涙を見ていなければ、私は仕事に走っただろう。7月31日午後、村内放送が流れた。裏山中腹にある地獄温泉で宿泊客が行方不明になったらしく、旧長陽村の消防団は現地へ集合せよという。火事の場合サイレンが鳴るが、今回の呼び出しはサイレンが鳴らなか...
家族

第53話 爆弾の血(2009年7月) 8KB ☆

恐ろしい事が起こっている。娘たちが道子化しつつある。つい先日、ウチに営業マンが来た。福岡から来た営業マンだったが、母校が長陽村らしく、大いに話が弾んだ。そこへ保育園帰りの次女が現れた。「ただいまー!」いつものように事務所へ走ってきた次女であ...
生きる醍醐味

第52話 飲み会について(2009年7月) 6KB

この不景気、飲み会が減ってしまい本気で困っている。むろん収入減にも困っているが、そういうものは「皆同じ」と思っていればどうにかなる。飲み会はどうにもならない。心が悶えてしょうがない。たまに役人が来る。好きな音楽を流し、普段着でモノづくりをし...
生きる醍醐味

第51話 ボリの温情(2009年6月) 9KB

だいぶ前の話だが、北九州の黒埼という場所でぼられた事がある。「ぼる」という言葉を辞書で調べてみると、「法外な代価や賃銭を要求する、不当な利益をむさぼる」とあり、それには該当せぬが、確かにぼられた。ぼられようとした。ぼられた知人や友人には事欠...
家族

第50話 全滅の日(2009年5月) 9KB

二日ほど前、家族が全滅した。人類史上最強の健康体である嫁がダウンすると、続けて長女、そして三女が嘔吐した。次女は症状が軽かったものの気分が乗らないらしく終始ウダウダし、続けて私まで微熱と関節痛に襲われた。私が機能しない時、家庭は大いに回る。...
仕事

第49話 暇人の家(2009年4月) 12KB

モノづくりが暇である。暇だから営業をし、色々やった。やればやるほど赤字になった。嘘みたいに価格が安い。その代わり加工屋さんの見積りも安い。以前の半額である。みんな仕事がなく、少ない仕事を奪い合っている。全ての物価が半額になるか、よほど身にな...
南阿蘇

第48話 集落の雑談(2009年3月) 9KB

つい先日、96歳の爺様が失踪した。自営消防隊に入り、初めての人探しがそれであったが、この日は凄い雨であった。爺様の集落は阿蘇五岳の中腹にあり、足腰も弱っておられるという事で、早く見付けねば命に関わる。ご近所、親族、総出で探されたらしいが見付...

第47話 優しい男(2009年3月) 10KB

多田隈(ただくま)という友がいる。姓も珍しいが、その性格も容貌も珍しい。基本的にクネクネしている。見た目もそうだが、性格的にもクネクネしていて掴みどころがない。多田隈とは中学時代の三年を軟式テニス部で過ごした。中学の三年というのは私の青春に...
南阿蘇

第46話 田舎選挙(2009年2月)6KB

ここ数日イライラしている。選挙である。我家は南阿蘇村の大通り沿いにあり、選挙カーの往来が激しい。更に駅も近く、空き地もあり、集落の規模もまぁまぁ大きいため、その騒音は途切れる事がない。ビラもひっきりなしに届けられる。「知り合いだからよろしく...
モノ

第45話 携帯パンデミック(2009年1月)10KB

PHSを持ったのが19歳だから、鎖に繋がれ13年目という事になる。当時、高嶺の花だった携帯電話というものがグッと身近になったのはPHSの出現であった。熊本県民はワサモンといわれ、新しいモノに食いつきやすい県民性という事だが、こと私に至っては...
仕事

第44話 初春の遠望(2009年1月)6KB

昨年の秋だったか、(怠け過ぎている…)その事を思った。店舗を持たぬ自営業は自由業であるため際限なく気ままであり、堕ちようと思えばどこまでも堕ちる。あるギャンブルの帰り、私は白川の流れに沿ってぼんやり歩いていた。歩きながら我が身の自由を誇らし...
仕事

第43話 節約の話(2008年12月)10KB

ひどい景気になってきた。うちは景気の上下に関わらず常時低空飛行であるため影響は軽微であるが、それにしても近辺の慌てっぷりを見ていると気が滅入ってくる。何よりもマスコミが悪い。「悪い、悪い」と日夜連呼するため、悪くなくとも悪いような気になって...

第42話 冬の蛍(2008年12月)12KB

12月3日。この日は朝から素晴らしい天気で暖かかったため、子が学校から帰ってくるや近所の公園へ遊びに出かけた。日が落ちるまで遊び、外食をしようと近所を流してみたが、どこも休みで閉まっている。阿蘇の飲食店は気分屋が多い。「仕方がない」という事...
家族

第41話 アレルギー検査(2008年11月)13KB

秋に入り鼻が詰まるようになった。症状から見るに風邪ではない。何かアレルギーであろうと想像したが、特に調べようとは思わなかった。経験上、三日もすれば消えゆく事が分かっていたからだ。世の中には「ブタクサ」という雑草があるらしい。夏の終わりから秋...
仕事

第40話 古巣へゆく(2008年10月)22KB

私の社会人生活は北九州から始まっている。学校を二十歳で卒業した後、安川電機という、まぁまぁ有名な企業に入った。安川電機を選んだ理由は実父にある。実父の社会人生活はブリヂストンの熊本工場から始まっているが、数年働いたところで関東転勤を命じられ...
家族

第39話 美菜について(2008年9月)10KB

変な夢をみた。ちょっと太っている年頃の女性が、「私は愛されてなかったから…」そう言って泣くところから始まった。年頃の女性は私の嫁に何か相談しているらしい。嫁も女性も喪服を着ている。「そんな事はないよ。お父さんは美菜ちゃんも好きだったよ」嫁は...
南阿蘇

第38話 恋慕の人と芸術(2008年9月)7KB

阿蘇の音楽家といえばビエントである。西原村に住んでいる二人組で美女と野獣の組み合わせがビジュアル的に何ともいえない。音もいい。情熱家の私にとって意味不明に鬼気迫るサビの部分は何かをやろうとしている時に具合が良く、仕事のBGMとしては打ってつ...
生きる醍醐味

第37話 出動(2008年9月)7KB

8月25日午前8時半、村内放送にて消防団の出動要請があった。南阿蘇村へ住んで初めての出動要請であったが、私はフライス盤を前に黙々と金属加工をしており、放送があっているのは分かったが、それが出動要請とは全く気付かなかった。私に告げるべき嫁は家...
南阿蘇

第36話 夢のつづき(2008年8月)9KB

田舎の要諦は保守的思想にある。万物は諸行無常であるから理屈としては変化に順応していかねばならないが、こと田舎にあって、変化は大いなる事件でしかない。それは田舎の営みが自然に拠っていて、自然は同じ循環を繰り返しながら時として大いに暴れる。人間...
南阿蘇

第35話 田園の営み(2008年8月)8KB

標高400メートルの南阿蘇といえども夏は暑い。理論値で3度ちょいしか変わらず、平地が35度の猛暑日であれば谷の温度は32度。やはり暑い。仕事をやっててヤル気がなくなる瞬間といえば、やはり昼飯の後である。雇われの身であれば「ヤル気がなくなりま...

第34話 デブ、羅漢寺へゆく(2008年8月)16KB

私は太っている。太っているが運動は好きで、自分で言うのも何だが運動神経は良く、モノやボールを使う競技は人並以上にこなす自信がある。基礎体力はない。筋力・持久力、共に人並以下であり、特に後者が覚束ない。が、体力の限界に挑戦するのは好きだ。心と...

第33話 総本山と八幡様(2008年7月)9KB

総本山という格付けがある。私たち庶民にとってはどうでもいい話だが、宗教家にとっては天と地の差を生む大問題の格付けである。宗教というものは総じて本山から派生し各地へ散らばっており、枝葉においては本山の威光をもって活動を行い、金額の多寡は知らぬ...
南阿蘇

第32話 神話の道(2008年7月) 19KB

阿蘇は神話の里である。建磐龍命(たけいわたつのみこと)という神武天皇の孫が阿蘇そのものを造ったらしい。日本という国の始まりは色々な人が色々な事を言っててよく分からない。分からないが、年号を始まりとするなら神武天皇から始まっている。その元年は...
モノ

第31話 百式螺旋(2008年7月) 8KB

初めてラッカーというものを使った。言わずと知れた塗装用のスプレー缶だが、プラモ屋の息子でこれを使った事がないとは何とも悲しい現実である。ホームセンターでそれを手に取り、(幼少の影響は死ぬまで残る・・・、怖い・・・)その事を思った。というのも...
家族

第30話 釈迦、キリスト、そして道子(2008年6月) 10KB

「私は何も考えない」嫁・道子は常々自分の事をそう言っている。そんな事はあるまいと常日頃から旺盛な興味を持ち、じっくり嫁を眺めているが、恐ろしい事に本当に何も考えてない風向きがある。ある古老はこう言った。「死ぬ間際になって世ん中んこつがちぃっ...
南阿蘇

第29話 陰と陽(2008年6月) 9KB

私のいる場所を河陽という。明治12年まで河陽村という一つの行政区だったが、長野村、下野村と合併し、長陽村になり、その後、南阿蘇村になった。河陽は南郷谷の西側になる。白川を境に河陽村、河陰村と分けられている。中国地方と同じく、日照時間の関係か...
南阿蘇

第28話 道について(2008年5月) 8KB

手元に明治35年の地図がある。地元の教育委員会に頂いたもので、縮尺は1/50000、阿蘇南郷谷の地図である。今、私のマイブームはこれに載っている古道を探す事で、現在の地図とこの地図を照らし合わせ、事前に検討を重ねた上で現地を走っている。走る...

第27話 テレサテンとチンピラ(2008年5月) 10KB

つい先日、テレビでテレサテンの特番がやっていて学生時代の事を思い出した。私は熊本電波高専という元スパイ養成学校の出であるが、その寮の厳しさといったら半端じゃなかった。ほんの一例として寮の風呂を挙げるが、浴室へ入ると入口のところで正座をし、洗...
南阿蘇

第26話 碧翠楼(2008年5月) 19KB

阿蘇谷を流れる川を黒川という。南郷谷を流れる川を白川という。この二つの清き流れはそれぞれの谷の低いところをゆるりと流れ、立野で合わさって白川となり、それからは勢いを増して大津へ落ち、以後のんびりと旅を続け有明海に注がれる。熊本が誇る一級河川...

第25話 政治について(2008年4月) 6KB

集団の中に身を置くならば多かれ少なかれ政治というものに触れざるを得ない。永田町の政治は遠いところでやっているけれども必ず身近なところに落ちてくるし、近所の密室でやってるそれも必ず我身に降ってくる。しかしこれらは知らんふりさえしていれば一部の...
南阿蘇

第24話 阿蘇下田の話(2008年4月) 11KB

私が暮らしている南阿蘇村は2005年に生まれた。御多分に漏れず平成の大合併により産声を上げた村で、その身は長陽村、白水村、久木野村から成る。村民は約12000人。意外に多いというのが私の感想だが、村の面積を見れば、(まぁ、このくらいはいて当...
家族

第23話 次女と母、そして家族(2008年4月) 13KB

前話に引き続き次女との二人旅について書こうとしている。長女と次女の三歳七ヶ月に至るまでの大きな違いは、母親との密着度にある。次女はヒルシュスプルング病という厄介な病気を持って生まれたために生後一年間は入退院を繰り返した。嫁は付き添い入院とい...

第22話 雨の高野山(2008年3月) 15KB

ここ数ヶ月、ひどく忙しかった。仕事ばかりをしていたと言えば嘘になるが、連続的にモノづくりの予定が入っており、休んで何かをしたという日が皆無であった。「どこかへ行きたい」ふと漏らしたのが3月18日で、その翌日3月19日には船に乗った。大阪行き...

第21話 見とれる爺様(2008年3月) 5KB

庭の最も目立つところにひどく年老いた梅の木がある。引っ越した当初、夫婦揃って枯れ木と思い、地元の人に切ってもらおうとしたところ、「こん木は生きとりますばい。それにカタチんよか。もったいなかですよ」そう言われ、ほっといたら花が咲いた。咲き誇る...

第20話 歌う爺様(2008年2月) 5KB

氷点下8度、凍てつく寒さの中、「えいや」と布団を飛び出し、いつものように家族五人で食卓を囲み、それから温泉へ向かった。最近は仕事前に温泉へ行くのがマイブームで、いつもは次女が付いてくる。しかし今日は保育園で交通教室なるものがあるらしく、女衆...
仕事

第19話 年始に考えるべき事(2008年2月) 7KB

ぼんやりと事業計画について考えている。私は「管理」という言葉は嫌いだが、「計画」は好きである。どれくらい好きかというと、豆腐一つを買いに行くにしても緻密なタイムスケジュールを立てる。それくらい好きである。計画というものは小説を書く上での構成...

第18話 鉄道ファンと私(2008年1月) 9KB

数日前、飲み会のお誘いを受けた。夢挑戦プラザという熊本県が支援している歳若い企業連の新年会で、熊本市でやるという。むろん承諾した。飲む事に対する欲は減少の一途を辿っているが、飲み会へ欲は愛へと昇華し、その程度は増加の一途を辿っている。何か障...
仕事

第17話 独立の醍醐味(2007年12月) 6KB

独立して二ヶ月が過ぎた。おかげ様で想定よりも順調な滑り出しを見せてはいるが、それは売上のみの話である。入金される金額がサラリーマンより多いため、(うむうむ…、俺もなかなかやるではないか)何も考えずニヤリ笑っていたものだが、指定の日に「支払い...
家族

第16話 日常温泉(2007年12月) 4KB

温泉が近い。自宅から徒歩四分弱のところに掛け流しの温泉があり、車を使えば五分圏内に十以上の温泉があるため、もう長いこと自宅の風呂に入っていない。お値段もリーズナブルで村民であれば二百円、子供は小学校まで無料なため、こうも燃料代が上がった今、...
家族

第15話 田舎暮らしの一ヶ月(2007年11月) 8KB

南阿蘇村へ越してき、早一ヶ月が経とうとしている。家は中古住宅を買った。前の持ち主は広島の方である。裏山の斜面に皮膚病に効く事で有名な秘湯があり、そこへ通うための別荘として買われていたらしい。近所の人の証言によると実に素晴らしいご夫婦だったよ...
家族

第14話 サラリーマン適性(2007年10月) 9KB

第十三話を書いてから約三ヶ月が過ぎてしまった。その間に退職、独立、引越しと様々な事が続き、実に慌しい日々を送ってしまったが、その日々を振り返るに、私はこういう状態が嫌いではないという事にぼんやり気付いた。むしろ好んでその方向へ進んでいる様を...
家族

第13話 一人の日(2007年7月) 3KB

約二週間、嫁と子供が埼玉に帰省している。人科最強の寂しがり屋である私は、一人っきりにならぬよう綿密な計画を立てたわけだが、誰も捕まらなかった日が一日だけできてしまった。7月27日である。仕事が終わって真っ暗の家に帰る。この時点で気が滅入るの...

第12話 そっけんがら(2007年7月) 9KB

「そっけんがら」この文字列が何を意味しているか…、分かる人はまずいまい。熊本出身の私でさえ、その漁師言葉に首を傾げた。この言葉、「だから」を意味する柳川地方の漁師言葉である。使用法はこうだ。「明日は台風がくってったい。そっけんがら、遊びたく...
モノ

第11話 顔の話(2007年5月) 5KB

私は顔がでかいらしい。頭ではない。その下にある顔である。頭もでかい方だが嫁に測ってもらったところ59センチでギリギリ大台に乗っていなかった。が・・・、顔は鼻も含めれば大台に乗ってしまいそうで測る事が憚られた。普通の人は上(頭)から下(顎)に...

第10話 三十路入り(2007年5月) 5KB

私事であるが、5月15日、晴れて三十路を迎える。この極めて微妙な節目の日を大抵の人は恐れ慄くが、こと私に至ってはちょっぴり嬉しい。半年ほど前、某有名企業を訪れた時、こんな事があった。ある上役と商談ルームで真面目な話をしている折、若い女の子が...
モノ

第9話 ポケベルより(2007年4月) 9KB ☆

新聞記事に載っていたが、NTTドコモがポケベルから撤退するらしい。極めて高いシェアを誇っていたドコモが撤退する事で、ポケベルという我々の青春を支えてくれた通信機器がこの世から消えてなくなる事は間違いない。首にぶら下げている携帯電話をチラリ見...
家族

第8話 春の足音(2007年3月) 5KB ☆

その日の私は「ひたすらネジを締め続ける」という作業に没頭していた。久々に研究室を飛び出し、作業着に着替え、真っ黒になりながら現場でネジを締め続けていると一本の電話が鳴った。嫁からであった。「大変だよー! 幼稚園から電話があって春の熱が引かな...

第7話 思い出した風流の話 (2006年10月) 8KB

私の知り合いに松尾芭蕉のような人がいた。知り合いと言っても一度しか会った事がないし年齢は不詳。ただ北海道在住という事だけが分かっていて、何度か手紙の交換をした。見た目は芸術家風の老人である。白く豊かなヒゲが顔の下半分を覆っていて、頭はツルツ...

第6話 男の苦悩 (2006年9月) 5KB

男という生き物は女の変わり目に必ず苦悩するものだ。例えば父親。少女からレディーに変わるその数年、「足臭い! 寄るな! 見るな! 洗濯物は別!」己のエキスから変異した、その可愛い可愛い娘に罵倒され、(なぜ?)眠れぬ日を過ごさねばならない。その...
技術

第5話 感じた数日 (2006年8月) 9KB

私はこういうものを書いている身なので、「凝る」という事が好きなタチである。その代わり飽きっぽい。ダーッと集中して何かをやる、それが軌道に乗ったりダラダラしたりすると無性に別の事がやりたくなる。好奇心に集中力が負けるのだ。私の履歴書に書けるス...
モノ

第4話 黄色い箱の力 (2006年7月) 5KB ☆

私はバイク通勤をしている身である。乗っているバイクはホンダのカブ50。最近の古カッコいいカブ50ではなく、農家のオッサンや集金をする人、もしくは農協の職員が愛して止まない旧型のカブ50である。購入価格は2万円。価格が価格であるから、シートに...

第3話 人柄の話 (2006年6月) 4KB

普通なら腹が立つ事も、(あやつならしょうがない)そう思える奴が稀にいる。これに対し、(お前のやる事なす事、全て腹立つー!)そんな奴も稀にいる。相性も多少はあろうが、すごい奴は大体がすごいと思っているし、そんな奴は大体がそんな奴だと思っている...

第2話 学ぶといふ事 (2006年5月) 5KB

柳川に越してき、五ヶ月が経った。蚊が多い事と水の不味さには辟易するものがあるが、こと「学び」というものに関しては、(他の土地の追随を許さないのではないか?)柳川に関し、そういう感想を抱いている。図書館の充実ぶり、講習会の多さ、古文書館の設置...

第1話 水郷の人~田中吉政~(2006年4月) 7KB

(どこかに似ている…)そう思った。柳川の風景である。家に帰り、旅日記の紐を解き、撮り溜めた写真に目を通すと、それは近江八幡の風景であった。二年前の夏の事だが、ふと思い立ち熊本城から江戸城まで歩いた。加藤家や細川家の参勤交代ルートに倣い豊後街...